DNSとは
沿革
DNS (Dynamic Neuromuscular Stabilization、動的神経筋安定化)はチェコ共和国の理学療法士であるパベル コラージュが発案したリハビリテーションアプローチです。(3
コラージュは1999年から首都プラハにあるチャールズ大学病院リハビリテーション科の科長を務めています。(1
チェコ共和国にはボイタやレヴィット、ヤンダというリハビリテーション界で有名な神経医やリハビリテーション医がいました。
彼ら3人はコラージュの良きメンターでした。(4
ボイタ、レヴィット、ヤンダなどが1960年代にリハビリテーション徒手医療プラハ学校を設立しました。(2, (4
彼らは神経系と徒手療法の関係性の発見、そして徒手医療を科学へと高めるといった画期的な功績を残しました。(4
「自然な運動パターンは脳にあり、それらは徒手マニピュレーションで刺激することができる」ということを彼らは確信していました。(4
彼らが臨床で重要視していたことは患者への教育とトレーニングそして患者の率先した参加の必要性です。(4
ボイタ、レヴィット、ヤンダが説明してきた神経発達とリハビリテーションの画期的な理論を元にコラージュは次世代臨床プロトコルをまとめました。(2
それがDNSです。運動機能を復元させ、安定させるためのアプローチです。(2
理論
DNSは単にテクニックでは無く、移動システム機能の神経生理学的理論をより理解するための総体的な方法です。
DNSには3つの大きな元になっている理論があります。
それらは、脊柱の統合的安定化機能、発達運動学、皮質機能と身体認識です。(反射性移動運動は僕が履修した時は教えられていましたが、現在は教えられていないので省略します。)
1、脊柱の統合的安定化機能
DNSでは脊柱の統合的安定化機能をアクティベートさせるアプローチを行います。(5
ここで注目される筋肉は多裂筋、頸椎深部屈曲筋、横隔膜、腹壁、骨盤底筋郡です。(5
動きが始まる前にこれらの筋肉は自動的にアクティベートされて、安定した土台を作ります。これをフィードフォワード制御といいます。(5
安定させるこれらの筋肉のアクティベーションはあらゆる動きにおいて、意識的に考えることなく自動的に行われます。(5
これら全ての安定させる筋肉はばらばらではなく一つの機能的ユニットとして働いています。(5
それは律動的な動きの際に脊柱と体幹の安定性を確かなものにするのです。(5
これを機能的安定性といいます。
機能的安定性は四肢と頭部の安全で意図的な動きに必要とされています。(5
2、発達運動学
DNSの概念は発達運動学の科学的原則と運動機能の成長における神経生理学を元にしています。(5
発達運動学とは人間が生まれた後の運動機能の発達についてです。(6
人間の移動機能は多くの他の動物と違い、生まれた時点では発達していません。(6
人間は出産後の中枢神経と筋機能の成長が必要なのです。(6
この成長過程は解剖学的成長と関係しています。(6
また、中枢神経が成長すると共に意図的な筋機能が次第にアクティベートされていきます。(6
いつ、どうやって、頭を上げたり、おもちゃを握ったり、寝返りをうったり、ハイハイを始めたりということを赤ちゃんに教える必要はありません。(6
中枢神経の発達と共にこれらの全ての動きは自動的に始まるのです。(6
そして、これらの動きは遺伝子学的に予め決められた順番でできるようになっています。(6
発達運動学は移動システムの成長における神経生理学を説明していますが、特に、生まれてから1年の発達についてです。(6
例えば、
- 矢状面上での脊柱の安定性、
- 体幹の回旋と共に起こる律動的な動きの発達、
- 最初の1年における自動的に起こる運動パターン
などです。(6
人間の神経系は姿勢や動き方をコントロールしていて、この運動制御は生まれてから最初の1年で主に確立されます。(2
発達運動学がなぜ重要かというと、人間の成長における理想的な姿勢と関節への荷重に必要な理想的な筋肉の同時活性化の特徴を表しているからです。(6
DNSでは患者の安定化機能を健康な赤ちゃんの安定化機能の発達と比べて評価を行います。それにより、患者の動作における機能不全を明らかにします。(5, (6
正しい中枢の運動制御を回復させることで機能の大きな改善につながるとDNSでは考えています。(6
3、皮質機能と身体認識
DNSでは身体認識と皮質機能を重視しています。(7
知覚統合は常に無意識下で行われています。(7
知覚情報には
- 味覚
- 視覚
- 聴覚
- 触覚
- 臭覚
- 固有受容感覚
- 内受容感覚
- 前庭系
があります。(8
これらの知覚は空間での体の位置や私たちの周りの環境について常に情報を私たちにインプットしています。(8
脳はこれら全ての知覚からの求心性神経情報を整理しています。(7
全ての知覚情報の処理は脳の皮質レベルで行われていて、その情報処理が立体認知機能の質と動きのパターンの質に関係しています。(8
知覚統合によっては私たちは特定の状況に的確そして意図的に反応しています。(8
皮質レベルで行われている機能の1つに立体認知機能があります。
立体認知とは触ることで固体を認識する能力です。(7
また、自分の身体をイメージすることや身体認識も立体認知の一部です。(7
これらの知覚認識は律動的な動きや意図的な動きを行うために前もって必要なものです。(7
しかし、これらの知覚認識がない場合、能動的に握ることや他の意図的な常同運動ができません。(7
この立体認知能力を高めるには感覚機能と運動機能の両方を同時にトレーニングしなければなりません。(7
立体認知の質の低さは移動システムでの機能不全や痛みにおける重要な原因の1つであり、主に慢性症状の場合に立体認知の質の低さが当てはまります。(7
生まれてから立体認知は運動発達と共に成長します。これら2つは互いに依存し合っています。(7
例えば、手の把握です。新生児の把握反射は能動的で意図的な握りではありません。
しかし、生後3ヶ月になると、立体認知が発達し始めて尺側の握りが始まります。
生後4ヶ月半になると、赤ちゃんは物体を見てそれを認識して能動的に握るようになります。(7
立体認知や身体認識は次の3つを決める前もって必要な基本的なことです。
- 全ての意図的な動き
- 選択した動きの質
- 力を抜く質 (7
質の良い立体認知とは全ての受容器官からの情報処理が高い質で行われていることです。
それにより体節の位置や動きの違いが分かる能力がより良くなり、そして、力を抜く能力がより良くなります。
また、それは良い動きをするために重要であり、度重なる怪我の予防になります。(7
手法
DNSの治療は発達運動学で定義された理想的なパターンをトレーニングすることです。(5
特定の機能的エクササイズを行う時に統合的安定化機能に集中することによって脊柱の安定性を向上させることができます。(5
最適な動きのパターンを自動的にアクティベートし、最適な動きを安定させる筋肉を同時活性化させるためには脳を正しく刺激し、また、脳を調整しなければなりません。(5
この治療中に復元された中枢にコントロールされた動きと安定性を維持することを脳に覚えさせることが最大の目的です。(5
これらのエクササイズを繰り返し行うことで最終的に、日常での基本的な動きが自動的に中枢によってコントロールされ、その動きが定着するのです。(5
パフォーマンスインテグレーションとDNS
パフォーマンスインテグレーションではDNSをセッションで取り入れてクライアント様の身体の改善に役立てています。
藤橋正幸はDNSの講習に参加しています。コースAからCまで受講し、コースAからCまでの試験にも合格をしています。
今まで受講したDNSのコース
2009.06.15-17
Dynamic Neuromuscular Stabilization: A Developmental Kinesiology Approach at RIC
2012.09.22-24: DNS コースA 受講
2012.12.22: DNS コースA 試験合格
2013.04.25-28: DNS コースB 受講
2013.10.10: DNS コースB 試験合格
2013.10.23: 1st Annual DNS Scientific Symposium
2013.10.24-27: DNS コースC 受講
2014.02.19: DNS コースC 試験合格
参考文献
- https://www.rehabps.com/VIDEO/Department_of_Rehabilitation.html
- https://www.rehabps.com/REHABILITATION/Home.html
- https://www.rehabps.com/REHABILITATION/Kolar.html
- https://nydnrehab.com/treatment-methods/dynamic-neuromuscular-stabilization/prague-school-of-rehabilitation/
- https://www.rehabps.com/VIDEO/DNS_What_Is.html
- https://www.rehabps.com/VIDEO/Developmental_Kinesiology.html
- https://www.rehabps.com/VIDEO/Cortical_functions.html
- DNS Course C handout