ここ最近、バスケットボール選手や野球選手のアキレス腱断裂の怪我のニュースを聞きます。
アキレス腱断裂は前十字靭帯断裂と同じように大きな怪我の1つです。
今回はアキレス腱断裂はどのような怪我なのか簡単に説明します。
1、アキレス腱ってどこ?
アキレス腱とは簡単に言うとふくらはぎの筋肉が踵に付いているあたりのことを指します。
踵の少し上に指でつまめるひものような物がありますよね。
それがアキレス腱です。
そもそも、アキレス腱の「腱」って何でしょう?
体の他の部分で○○腱って言うところは他にあります?
うーん、あまり思いつかないかもしれません。
腱とは筋肉が骨に付いている部分の組織のことです。
簡単に言うと、腱は筋肉の端っこの部分です。
よく筋肉の絵というと、真ん中が盛り上がっていて、両端が細くなってるじゃないですか。
その両端の細くなっているところです。
ですから、ほとんどの筋肉に腱があります。
先程、アキレス腱はふくらはぎの筋肉の腱だということをお話しました。
その「ふくらはぎ」をもう少し細かく見てみましょう。
実はふくらはぎは2つの筋肉のことを指しています。
ヒラメ筋と腓腹筋の2つです。
ヒラメ筋は骨に近い深いところにあります。
一方の腓腹筋は表面にあります。
みなさんがふくらはぎを触ったときに実際に触っているのは腓腹筋です。
ヒラメ筋は腓腹筋の下にあるので直接触るのは難しいです。
ヒラメ筋と腓腹筋が踵に近づいたところでつながって1つになります。
それがアキレス腱です。
ヒラメ筋と腓腹筋の両方の踵側の端っこですね。
2、アキレス腱断裂ってどんな怪我?
アキレス腱断裂とはアキレス腱が完全に全部が切れてしまう怪我です。
一般的には踵から約5cmあたりで断裂が起こることが多いようです。
他にはアキレス腱の一部が切れていたり、アキレス腱が炎症を起こしているという種類の怪我もあります。
アキレス腱断裂は完全に切れてしまっているので、ふくらはぎの筋肉であるヒラメ筋と腓腹筋が全く働かなくなります。
それはどういうことでしょう?
ヒラメ筋と腓腹筋の働きは主に足を下に下げることです。
ですから自分で足を下に動かそうとしても動かすことが出来ません。
また、普通に歩くことが出来なくなります。
それは歩く動作では足を下に下げる、すなわち、地面を押す動作が伴うからです。
症状としては痛みが受傷直後からあります。
また、時間経つとともに腫れも出ます。
怪我をした時の感覚でよく言われているのが、
「後ろから銃で撃たれた感じ」
や
「後ろから蹴られた感じ」
です。
アメリカのアスレティックトレーニングの教科書などに最初の表現は書かれていたりするのですが、アメリカっぽいですよね。
日本じゃなかなか経験しませんしね。
まぁ、アメリカでもそうは経験しませんけどね。
僕の友達も数人がアキレス腱を切っているのですが、2つ目の表現をしていました。
1人はバスケの試合中に倒れて、誰かに後ろから蹴られたと思って振り返ったら誰もいなかったと言い、
もう1人はバーで立って飲んでいて、動いたときに床に倒れ、誰かに蹴られたと思った、と言っていました。
また、切れた時に音が聞こえたと言う人もいるようです。
3、どうやって起こるの?
スポーツの現場でよく起こる状況は
- 走る
- 飛ぶ
- 加速する時
- 減速する時
- 方向転換をする時
などです。
これらの動作の時に過度な力がアキレス腱にかかるからです。
4、リスク要因
はっきりとした怪我の原因は論文上では明らかにされておらず、原因はいろいろと考えられるようです。(1
しかし、リスク要因としてよく言われているのは
- 年齢
- 性別
- ステロイド注射
- 肥満
などです。
年齢は30代から40代に怪我をする場合が多いようです。
この年代で普段あまり運動をしておらず、週末などにたまにスポーツをしたときに切ってしまうケースがよく見られます。
また、アスリートではコービー ブライアントがアキレス腱を切ったのは彼が35歳の時でした。
女性より男性の方がアキレス腱を切る割合は多く、約5倍と言われています。
痛みや炎症を抑えるためにステロイド注射を用いられる場合がありますが、この薬は腱を弱くすることがあるのでステロイド注射を受けている方のリスクは上がります。
体重増加はアキレス腱により負担をかけてしまいます。
5、受傷後と復帰まで
受傷後の治療の選択は手術と保存があります。
手術では切れて離れてしまった腱を縫い合わせます。
アスリートの場合、手術をすることが僕の経験上ほとんどです。
保存の場合、ギプスで足を固定して治癒するのを待ちます。
アスリートでも保存方法を行うケースもあるようです。
僕個人の意見ですが、アスリートの場合どちらを選択するかは競技によると思います。
スポーツへの復帰までの期間ですが、スポーツの種類によって異なるでしょう。
加速、減速、方向転換、ジャンプなどの激しい動きが伴う競技では術後約10ヶ月から12ヶ月が安全に復帰するのにかかるというのが僕の現在の意見です。
6、まとめ
- アキレス腱はヒラメ筋と腓腹筋がつながり、踵に付着した部位。
- アキレス腱断裂とは完全に切れてしまった状態で、足を下に下げることが出来なくなる。
- スポーツの競技中では走る、飛ぶ、加速、減速、方向転換などの動作で起こる。
- リスク要因は年齢、性別、ステロイド注射、肥満など。
- 治療方法は手術と保存がある。
- 術後からスポーツへの復帰は10ヶ月から12ヶ月。
参考文献
- Longo UG, Petrillo S, Maffulli N, Denaro, V. Acute Achilles Tendon Rupture in Athletes. Foot Ankle Clinic N Am 18 (2013) 319-338.
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