アスレティックトレーナー(AT)は受傷や手術の直後からリハビリテーションが出来るべき です。特に、リハビリテーションの初期がしっかり出来ることが競技復帰への鍵となります。今回はアスレティックトレーナーがリハビリで出来るべきことについてお話します。
日本でのリハビリテーションの考え方
日本ではスポーツ選手に対するリハビリテーションを2つに分けています:メディカルリハビリテーションとアスレティックリハビリテーション。山本利春さんによるとメディカルリハビリテーションとは「日常生活を支障なく行えるようになり社会復帰することが目的」で、アスレティックリハビリテーションは「競技復帰あるいは積極的なスポーツ活動への復帰を目的」と表現されています。(1)
ATが両方できなければならない理由
どのような資格を持っていても、チームでアスレティックトレーナーとして怪我をしたスポーツ選手に関わる場合、受傷から復帰までを毎日見ることになります。ですから、単にリハビリテーションと呼べばでいいのではないでしょうか。受傷直後から競技復帰までの過程がリハビリテーションなので2つに分ける必要は無いです。アメリカではこのように2つに分けて呼んではいません。ATはメディカルリハビリテーションとアスレティックリハビリテーションの両方を出来ないといけません。なぜなら、ATは毎日その選手のリハビリテーションを受傷直後から復帰まで見るからです。スポーツ選手、特に大学生やプロのハイレベルの場合、一般の方とは状況が違うので週1回や3回では無く、毎日やる必要があります。
「メディカルリハビリテーション」は病院で行わないといけない事では無いし、スポーツの現場では資格が何であれそこにいるATが出来なければならないです。ですから、ATは「アスレティックリハビリテーション」だけが出来ればいいのではありません。そもそも、「メディカルリハビリテーション」と呼ばれるリハビリテーションの初期の事がしっかりと出来なかったら「アスレティックリハビリテーション」と呼ばれる機能的リハビリテーションに入れません。もし、不十分な状態で「アスレティックリハビリテーション」に入ったとしても機能的リハビリテーションは成功しない場合が多く、競技復帰が上手くいきません。
リハビリテーションで重要なこと
僕の経験から言うと、怪我の受傷直後や手術直後のリハビリテーションが上手く進まないと競技復帰に大きく影響します。基本的な身体の機能を回復し改善する事がまずは大切で、それがないがしろであると機能的なリハビリテーションは難しくなります。僕が重要視しているのは、瘢痕組織の状態を正常に戻す、筋機能の改善、そして、基本的な動作の間違いを正すことです。単に可動域を戻して、筋力を戻せばいいとは考えてはいません。
僕が考えるリハビリテーションで重要なこと
1、瘢痕組織の状態を正常に戻す。
2、筋機能の改善。
3、基本的動作の間違いを正す。
ある程度の可動域を回復させ、ウエイトで筋肉を付けて機能的なリハビリテーションをしたら競技復帰できるかも知れませんが、それでは怪我の根本的な解決に至っていない場合が多いです。そもそもの原因はどこから来ていて、それを正すことが重要だと僕は考えています。
身体の機能はスポーツをする上で土台になる部分です。身体の機能が正しく無ければ選手がいくら機能的なリハビリテーションやトレーニング、競技の練習をしても伸びしろが限られてしまいます。土台である基本的な身体の機能を回復させることで競技復帰が上手くいきます。
怪我や手術をした選手と一番長い時間を過ごすのはそのチームのアスレティックトレーナーです。ですから、そのアスレティックトレーナーが最初から最後までリハビリテーションをしっかりと出来るようになることが怪我をした選手にとって必要なのです。
参考文献
1、山本利春(2006)「シンポジウム4:アスレティックリハビリテーションの現状と課題」『アスレティックリハビリテーションの現状と課題〜早期競技復帰の問題点を中心に〜』、『体力科学』55、45〜50。