なぜ栄養が運動にとって重要なのでしょうか?それは体が働くために栄養が細胞内で使われるからです。今回は栄養と運動、特にミトコンドリアについて簡単に説明をします。要点をお話しますので最後まで読んでくださいね。
ところで体には幾つの細胞があるでしょう?ちょっと予想してみてください。答えは後ほどお伝えします。
細胞と細胞小器官
細胞と聞くとおそらくとても小さい物と考えると思います。顕微鏡で覗く物と思いつく人もいるでしょう。その通りです。人間の体はその小さな細胞がいくつも集まって出来ています。
それぞれの細胞の中には数種類の細胞小器官があります。例えば、核やミトコンドリアなどです。みなさんも生物の授業でこれらの名前を聞いたことがあるかもしれません。下の図を見てください。この全体が一つの細胞です。その中にこの図に書かれているような細胞小器官があります。それぞれの細胞小器官は特定の役割があり、その役割を果たすために特定の栄養素を必要としています。
・人間の体は細胞がいくつも集まってできている。
・細胞小器官には特定の役割がある。
・それぞれの細胞小器官は特定の栄養素が必要である。
エネルギーはミトコンドリアで作られる
細胞小器官の中でも特に運動に重要なミトコンドリアについて見てみましょう。一つの細胞の中に幾つかのミトコンドリアが存在します。一つだけではありません。ミトコンドリアの重要な役割の1つはエネルギーを作る事です。体を動かす源になるのがエネルギーです。運動を続けるためにはエネルギーが必要ですよね。そのエネルギーを作るのがミトコンドリアなのでその重要性も予想できますよね。
ミトコンドリア内で作られるエネルギーをATP(アデノシン三リン酸)といいます。ミトコンドリアはコエンザイムQ10(CoQ10)やLーカルニチン(アミノ酸)などの栄養素を使ってエネルギー(ATP)を作り出します。実にミトコンドリアは体のエネルギーの95%を生産します。ほぼ人間の活動の源であるエネルギーの全てはミトコンドリアで作られているということになります。ですから、適した栄養を摂らなければミトコンドリアはエネルギーを生産することが出来ず、身体は動き続けることが出来なくなります。
・ミトコンドリアがエネルギー(ATP)を作る。
・コエンザイムQ10(CoQ10)という栄養素が必要である。
・体のエネルギーの95%を作る。
ミトコンドリアは環境が大切
ミトコンドリアの性能がエネルギーを作るのに重要です。ミトコンドリアの機能の効率性は体が置かれている環境に影響されています。例えば、どんな物を食べているか、または、どれくらい運動をしているか、ストレスがあるかどうか、などによって左右されます。ミトコンドリアがエネルギー(ATP)を作るとき、活性酸素種(ROS)という有害物資が副産物として発生します。ROSはDNAを傷つける原因になります。性能の悪いミトコンドリアはROSをより発生させ、性能の良いミトコンドリアはROSの発生を少なくさせます。もし、健康的な食事をし、普段から運動を行なっていたらミトコンドリアは効率よくエネルギーを作ります。もし、不健康な食事をし、ストレスを溜めていたらミトコンドリアはROSをより発生させます。
・ミトコンドリアの性能は環境に影響される。
→ 食事、運動、ストレス、など。
・エネルギーが作られるときに一緒に作られる有害物質を活性酸素種(ROS)と言う。
・高性能=少ないROS, 低性能=多いROS。
ミトコンドリアとコエンザイムQ10
次に、ミトコンドリアに必要な栄養素を見てみましょう。先ほど述べたように、コエンザイムQ10(CoQ10)はミトコンドリアがエネルギーを発生させるのに不可欠な物質で、自然と体が作り出す抗酸化物質です。CoQ10(読み方:コ・キュー・テン)を多く含む食品はイワシ、サバ、牛肉、豚肉、ナッツです。抗酸化物質は先ほどお話しした活性酸素種(ROS)の発生や働きを抑えたり、活性酸素種(ROS)自体を取り除きます。他の抗酸化物質の例はポリフェノールです。こちらの方が聞いたことがあるかもしれません。ワインやコーヒー、お茶などに含まれています。
私たちの身体はCoQ10無しには機能しません。CoQ10がミトコンドリアで具体的にどう使われているかはとても専門的な話なので省略しますが、簡単に説明すると、ミトコンドリアがATPを作るのに起こる化学反応に使われます。適切な量のCoQ10はミトコンドリアのエネルギーの生産性を高めます。CoQ10の欠乏は鬱や線維筋痛症、パーキンソン病の原因になる可能性があります。前にも述べましたが、ミトコンドリアは細胞内に1つだけでなく複数存在しています。また、細胞内には異なる種類の細胞小器官が他にもあり、それぞれが特定の機能を持ち働いています。
・コエンザイムQ10
はミトコンドリアがエネルギー(ATP)を作るのに不可欠。
は抗酸化物質。
が多い食品:イワシ、サバ、牛肉、豚肉、ナッツ
はミトコンドリアのエネルギー(ATP)の生産性を高める。
細胞から個体、運動への繋がり
この記事の最初に人間の体の細胞の数を聞きました。みなさんは幾つだと思いましたか?それでは答えです。
私たちの体には30兆もの細胞があります。ちょっと想像するのが難しい数ですね。しかし、とにかく多いということはお分かりになるでしょう。
下の図のように、同じ種類の小さな細胞が集まって組織を作り、異なる組織が器官を形成し、異なる器官が集まりが器官系を作り、異なる器官系が生体を作り上げます。それはすなわち私たち、人間です。
これら30兆の一つ一つの細胞は身体が効率よく働くために適切な栄養素を必要としています。それなので、栄養素が足りなければ身体は機能しません。もし、十分な栄養を採っていなかったら、あなたは上手く運動が出来ないでしょう。なぜなら、脳から筋肉への神経伝達が最適に行われないからです。また、怪我も早く治らないでしょう。それは組織の損傷を治すタンパク質が効果的に生成されないからです。そして、身体の器官は適切に機能しないので、あなたは健康でいられないでしょう。これらは全ては栄養素によって機能しているのです。ですから、正しい量の正しい栄養素を摂取することが必須なのです。
今回はミトコンドリアの話を例としましたが、細胞小器官や体の内部はお互いに関わり合っています。同じように栄養素もお互い関わり合っています。ミトコンドリアの活動に必要な栄養素であるコエンザイムQ10は他の栄養素であるタウリン、ビタミンB2, C、葉酸を必要としています。細胞小器官のそれぞれは異なる役割を持ち、異なる栄養素が必要としています。それぞれの細胞小器官がお互いに関わり合い体の機能が適切に働きます。ですから、バランスの良い食生活が体にとって、そして、運動にとって重要となるのです。
・細胞→組織→器官→器官系→生体(人間)
・それぞれの細胞が栄養素を必要としている。
・栄養素が足りないと体は機能しない。
・正しい量と正しい栄養素が体には必要。
・体の内部や栄養はお互い関わり合って正しく機能している。
参考文献
- Berardi, John, et al. The Essentials of Sport and Exercise Nutrition 3rd Edition. Precision Nutrition, 2016
- Murray, Michael T. Encyclopedia of Nutritional Supplements. New York: Three Rivers Press, 1996
- https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements-coenzyme-q10/art-20362602
- https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html