今回は外で走るのとトレッドミルで走るとの違いについて解説します。
10月になり、シカゴは寒くなり始めました。冬がすぐに来るシカゴではもう少しでランニングのシーズンも終わりです。シカゴには-30Cでも外で走るようなハードコアなランナーもいますが、多くの人はジムなどのトレッドミルで冬の間は走ります。
外で走る方がトレッドミルで走るより疲れる?
トレッドミルで走り始めた当初は外で走るよりも楽に感じるかもしれません。しかし、春が来て再び外を走り始めると脚はすぐに疲れるし重く感じるし「走るのがキツイなぁ。体力が落ちてる?!」と思うでしょう。いったいどうしたんでしょうか?みなさんもこのように外で走るのとトレッドミルで走るとの違いを感じているかもしれません。
歩行周期
走っているとき、体は左右に体重移動をしながら片足立ちになることを繰り返しています。走っているとき(歩行運動)に足が地面に着いている期間を立脚期といい、立脚期には4つの局面があります。それらは順番に踵接地、足部水平、踵離地、つま先離れの4つです。立脚期の最初の2つの局面での筋肉の働き方が外を走っているときとトレッドミルで走っているときでは特に違うようです。外で走っているときのこの2つの局面での主だった筋肉の働きを見てみましょう。
立脚期
1. 踵接地 → 2. 足部水平 → 3. 踵離地 → 4. つま先離れ
立脚期最初の2つの局面で起こる筋活動と動作
踵が地面に着いたときから脚は地面を捉え始めます(踵接地)。このとき, ハムストリングが働き始め骨盤が必要以上に前へ傾かないようにコントロールします。その後、体重が立脚へと移動し始めます(足部水平)。すなわち、重心が立脚へと移動します。この時、立脚側のハムストリングと大臀筋(伸展繊維)が矢状面での骨盤の動きをコントロールします。そして、大内転筋の腱性部と内腹斜筋、腹横筋が前額面において重心を立脚へと移動させます。また、水平面では大内転筋の腱性部と中臀筋(前部繊維)、内側ハムストリング(半腱様筋、半膜様筋)、内腹斜筋により骨盤の後ろへの回転が起こります。これらの動きは自動的、すなわち、自ら筋肉を使って行われており、走っている間に身体の左右で同じように起こります。
立脚期最初の2つの局面で起こる筋活動と動作=自動
1. 踵接地
①矢状面:ハムストリングが骨盤を過度に前傾しないようにコントロール
2. 足部水平
①矢状面:ハムストリングと大臀筋(伸展繊維)が骨盤のコントロール
②前額面:大内転筋、内腹斜筋、腹横筋が重心を立脚側へ移動させる
③水平面:大内転筋(腱性部)、中臀筋(前部繊維)、半腱様筋、半膜様筋、内腹斜筋が骨盤を後傾させる
トレッドミル上での立脚期における筋活動
外で走るのとトレッドミルで走るのは違いがあります。トレッドミルで走っている時、これらの動きは主にトレッドミルによって引き起こされています。踵が地面に着いた時、脚はトレッドミルのベルトによって他動的に後ろへと引っ張られます。外を走っている時に比べ、内転筋や臀筋、ハムストリングはあまり働きません。言い換えると、これらの筋肉は十分に使われていないということです。トレッドミルで走っている間、股関節屈曲は常に自動的に行われますが、股関節伸展は常に他動的に行われます。
トレッドミル上での立脚期における筋活動=他動的
①トレッドミルのベルトで多動的に後ろへ引かれる
②内転筋、臀筋、ハムストリングの活動は低下
③股関節伸展は常に他動的
トレッドミルに傾斜をつける
では、トレッドミルで走る時の立脚期で筋活動を上げるにはどうすればいいでしょう。僕が勧めるのはトレッドミルに傾斜をつけることです。なぜなら、傾斜をつけることにより臀筋、ハムストリングの活動を上げることができるからです。具体的には1%~2%の傾斜を使うといいでしょう。
まとめ
外で走るときはトレッドミルで走るのに比べ、身体を前へ進めるためにより筋肉を使わなければなりません。このように、外で走っている時とトレッドミルで走っている時では筋肉の機能的働きはとても違います。そのため、外で走っている時の方がトレッドミルで走っている時より疲れるのです。トレッドミルで走る時は傾斜を1〜2%にすると臀筋やハムストリングの活動が上がるのでいいでしょう。
参考文献
PRI integration for fitness and movement text book