
人間の身体は単純であり複雑であると長い間この仕事をしてきて思います。「何で痛いのか?」「何が痛みの原因なのか?」など考えることは多くあります。身体は1つ1つの部分の働きだけに目が行きがちですが、1つ1つが働きながら身体全体で機能しています。今回は身体の部位はお互いに影響し合っているということについてお話をします。
症状 vs 原因
膝が痛い、腰が痛い、肩が凝るなど関節や筋肉の不調を感じることってよくありますよね。そんな時はその場所を揉んでもらいたい、ほぐしてもらいたい、その場所を触ってもらいたいと思うことが多いのではないでしょうか。それは症状がある場所に施術を行ってもらうと楽になることが多いからですよね。やっぱり痛い場所所や凝ってる場所が気になるのは当然ですからね。よく分かります。もし、症状がある場所へアプローチをして症状が戻って来なければそれでいいと思います。
しかし、場合によっては症状がある場所へアプローチをすることを続けてもなかなか改善されないことがあります。「やってもらった時はいいんだけど、またすぐに戻ってきちゃうんだよね…」なんてことがありませんか。そんな時は症状が出ている場所が痛みの原因ではないかもしれません。先の例は症状が出ている場所が問題の原因だったので、症状がある場所へのアプローチで解決ができたのです。痛みの原因が他の場所にある場合はこれでは解決はされないのです。
身体は構造的に繋がっている
身体は構造的に繋がっています。つま先から頭まで数多くの骨が繋がっているのは骨格の絵などでよく見ているでしょう。イメージしやすいと思います。しかし、筋肉や筋膜が同じように繋がっていることはあまり聞かないかもしれません。例えば、トレーニングの話でも「バイセプスカールは上腕二頭筋を鍛える」というように筋肉というと1つ1つに注目しがちだと思います。
身体には筋肉や筋膜の繋がりがいくつかあります。ある繋がりは足から頭まで繋がっているものもあるのです。筋膜の繋がりの例を挙げると、トーマス・マイヤーズのアナトミートレインにスーパフィシアルバックラインという繋がりがあります。この筋膜の繋がりは身体の後ろ側にあります。足底筋膜、ふくらはぎ、ハムストリング、脊柱起立筋、後頭下筋群、と足から頭まで1つの繋がりです。
また、筋肉の繋がりの例を挙げると、ロン・ハラスカのPRIにAICという多関節筋連鎖があります。横隔膜、大腰筋、腸骨筋、大腿筋膜張筋、外側広筋、大腿二頭筋という1つの筋肉の繋がりです。このように構造的に繋がっているということは、同じ繋がりにあるものはお互い影響し合っていると思いませんか?
身体は機能的に繋がっている
身体は機能的にも繋がっています。先程、身体は構造的に繋がっているという事をお話しましたが、構造的に繋がっているということは機能的にも何らかしらの影響をお互いに与えあっているのです。
例えば、ふくらはぎに痛みがあるとします。その時、ふくらはぎが関係する繋がりを見てみます。先程例を挙げたスーパーフィシアルバックラインをを考えてみましょう。この繋がりにはふくらはぎの他に足底筋膜やハムストリングなどがあります。これらの関係する部位を検査すると張りがあったり、筋力が下がっていたりします。これらにアプローチをして機能を改善させると、ふくらはぎの痛みが改善される場合があります。これは1つの構造的な繋がりが機能的な繋がりも成しているからです。
先ほどお話をした「症状」と「原因」を思い出してください。この例で挙げたふくらはぎが「症状」で、ハムストリングや足底筋膜が「原因」です。原因であるハムストリングや足底筋膜を改善することにより、繋がりの動きがよくなり、症状が出ているふくらはぎへの負担が減り、症状が和らぐのです。
まとめ
- 身体の痛みには症状と原因がある。
- 身体は構造的に繋がっている。
- 身体は機能的に繋がっている。
- 身体の部位はお互いに影響し合っている。
今回は身体の繋がりについてざっくりと簡単に説明しました。僕はセッションの中でこのようなことを考えながら皆さんの身体を見ています。他にもいろいろと考えたり、見ていることはあるのですが、1つの例としてご紹介しました。
皆さんの身体の一部「木」を見たり、身体全体「森」を見たりしながら皆さんの身体が良くなり、動きが良くなるようなセッションを心がけています。


