チームのカットとタイトルナイン

タイトルナイン

数ある大学内のチームでどのチームをカットするというのはどのように決めるのでしょうか?アメリカの大学のアスレティックデパートメントで働いた経験からどんなことが考慮される可能性があるのかお話します。

目次

カットされる理由

先日、スタンフォード大が11チームをカットするという投稿をしました。もちろん僕は今回のスタンフォード大や他の大学の件の内情は知る由もありません。考えられる点は大きく2つあります。

  • チームにかかる費用
  • タイトルナイン(Title IX)という法律

です。

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チームにかかる費用

数々の考慮されるであろうことはあるのですが、カットする大きな理由の1つは経費削減です。ですから、チームにかかっている費用が関係してきます。チームにかかっている費用にはコーチの人件費や遠征費は一般的によく知られていますね。その他にあまり思いつかない費用は、

  • そのスポーツで使う器具を買うコスト
  • その器具を維持するコスト
  • 練習場にかかるコスト
  • 遠征の際に器具を送るコスト

などがあります。例としてローイング(ボート)で考えてみましょう。

  • ボートの購入(ボートの種類、数)
  • オールの購入 (オールの種類、数)
  • ボートのメンテナンス
  • ボートハウスの所持
  • ボートハウスのメンテナンス
  • 練習場費(?)
  • デッキの設置
  • ボート、オールを遠征先に送る(トレーラーで送ります)

など、ちょっと考えただけでも他のスポーツと比べてかなり高額ですよね。バスケットボールのようにボールがいくつかあって、体育館があればいいとはだいぶ状況が違います。(もちろん他にも必要ですけどね。)

各チームの収益も関係あるんじゃない?

チームの収益も関係してるんじゃない?と考えるかもしれませんが、チームから得られる収益についてはあまり考慮されてないでしょう。それは、多くのチームがそれほど収益を上げていないからです。大学スポーツはアマチュアスポーツでNCAAのスポーツ全体で見たら収益はそれほど上げていません。チームの収益とは

  • ホームゲームでのチケット収入
  • NCAAから学校への分配
  • ボウルゲームからの収入
  • 寄付

などです。フットボールや男子バスケットボールは巨額な収益をあげます。女子ではバスケットボールが唯一収益を上げるチームですが、それでもこの2つと比べものにはなりません。それなのであまり考慮される点ではないでしょう。

男女平等という法律

もうひとつとても重要な考慮すべきことがあります。それはタイトルナイン(Title IX)です。おそらくほとんど聞いたことのない言葉でしょう。タイトルナインとは性別によって教育プログラムや活動の差別を禁じる教育における法律です。この法律と大学スポーツがどう関わっているかというと、男女平等にスポーツに参加する機会が与えられているかどうかです。

学生数の男女の比率に合わせなければならない

大学全体の生徒数の男女の比率に体育会の選手数の男女の比率も合わせなければなりません。例えば、A大学の生徒数の男女比が6:4だとします。その場合、A大学の体育会の選手数の男女比も少なくとも6:4でなければならないということです。これはチーム数では無く、選手の数です。男子のチームが多くて女子のチームが極端に少ない場合は比率が保たれていない可能性が高いのは明らかですよね。

男子選手の数が多くなってしまう理由のひとつ

歴史的な背景から男子選手の人数がもともと多かったという状況があります。それを女子にだけあるスポーツを加えてバランスを取ろうとしました。そこでよく見かけるのはバレーボールやフィールドホッケー、体操です。しかし、男子のチームには選手数が多い競技がありがちなのです。例えば、フットボールです。残念ながらNCAAには女子フットボールはありません。なので、男女同じチームを持つことによって人数を合わせることができません。フットボールには一般的に100人くらいの選手が所属しています。これはひとチームの人数としては多いですよね。タイトルナインに準ずるためにこの人数と同じくらいの女子選手が必要です。

どのようにして調整するか

どうやって調整するかというと、

  • 複数の女子チームの新設
  • 大人数の女子チームを1つ新設
  • 女子のチームを新設と男子のチームのカット
  • 男子のチームをカット

が考えられます。

複数の女子チームの新設

いくつかの女子チームを新設して女子選手の人数を増やすことができます。女子スポーツの中で比較的人数が多いスポーツはサッカーです。そのため、女子サッカーチームを新たに作ることも多いです。陸上部も人数が多いですが、陸上部は始めから女子チームがある場合が多いので新設されるということは少ないです。僕が以前働いていた大学で行ったのは女子サッカーと女子ゴルフの新設でした。

大人数の女子チームを1つ新設

大人数のチームを1つ新設と考えた場合、女子ローイングが考えられる例のひとつです。なぜかというと、女子ローイングも80ー100人ほどの選手が所属する場合が多いからです。女子ローイングは少し特殊なチーム編成をしています。未経験の主に1、2年生で構成される「ノービス」というグループとスカラシップで入学してきた数人と3、4年せいで構成される「ヴァーシティ」というグループの2つで編成されています。それぞれに40人前後が所属していて合計80−100人ほどになります。高校までの女子ローイングの人口はそれほど多くないため、大学から始める人が多いのです。コーチはキャンパスにいる一般学生に募集をかけ、才能を発掘するのです。スポーツ好きな学生で今までやってたスポーツでは大学でプレーできるレベルでは無く、一般学生として入学したが新しいスポーツを体育会レベルで挑戦したいという人が入部してきます。アメリカの大学スポーツでは珍しく、門戸が広いスポーツです。

別の方法

また別の方法として、女子のチームを作って、男子のチームをカットするということも行われることがあります。他には単に男子のチームをカットする場合もあります。上の女子のチームを作って、男子のチームをカットの場合、あまり経費削減にはなりません。

まとめ

アメリカの大学でチームをカットする理由のうちの2つは、

  • 経費削減
  • タイトルナイン

です。それぞれのアスレティックデパートメントが抱えている課題は大学によって異なります。その課題によってどのような手段を取るかは変わってくるのです。

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この記事を書いた人

パフォーマンスインテグレーション代表
全米アスレティックトレーナー協会公認、アスレティックトレーナー(ATC)

東京の市ヶ谷で怪我の予防と施術、リハビリテーション、トレーニングを行なっています。腰痛や膝の痛みのリハビリの専門家です。ブログではスポーツ障害や健康に役立つ情報を中心に発信しています。

アメリカの大学(NCAAディビジョン1)にて多競技でアスレティックトレーナー(ATC)として12年間働きました。多くの大学生やプロアスリートの怪我の予防や治療、リハビリを行なってきました。

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