アスリートが暑熱順化について知っておくべきこと

5月に入り、暑い日も出てきましたね。

徐々に夏が近づいている感じがします。

アスリートの皆さんは夏に向けてこの時期から始めなければならないことがあります。

それは何でしょうか?

答えは、「暑熱順化」です。

今回は皆さんが知っておくべき暑熱順化について簡単にお話します。

目次

動画解説:アスリートが暑熱順化について知っておくべきこと

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

暑熱順化とは?

暑熱順化とはいったい何でしょう?

答えは、

「身体が暑さになれること」

(1

です。

身体は暑い日が続くと次第に慣れて、暑さに強くなります。(1

身体が暑さになれるには時間が必要で、徐々に順応していきます。

皆さんも普段の生活の中でこれは実感しているのではないでしょうか?

これはとても重要なことなので覚えておきましょう。

なぜ暑熱順化が必要か?

なぜ、暑熱順化が必要なのでしょう?

それは熱中症による事故を防ぐためです。

近年、夏になると熱中症のニュースをよく聞くと思います。

熱中症により救急搬送されたり、最悪の場合は死亡事故になっているのを知っていると思います。

スポーツにおける熱中症の事故も耳にすると思います。

スポーツ振興センターによると、1975年から2017年までの43年間で学校管理下の熱中症死亡事故は170件ありました。(3

そのうち、145件が運動部活動によるものでした。(3

これは学校管理下の件数で、日本スポーツ協会の資料によると、日本のスポーツによる熱中症死亡事故全体のデータはないそうです。(3

ですから、スポーツ全体ではこの数字よりも多いのかもしれません。

熱中症による死亡事故は100%防ぐことができます。

予防のためにできることの1つが暑熱順化なのです。

身体はどう暑さに慣れるのか?

次に身体はどう暑さに慣れていくのか見ていきましょう。

運動や仕事などで身体を動かすと体内で熱が作られて、体温が上昇します。(1

これは皆さんもよく実感することでしょう。

体温が上がった時に身体はどのようにして体温調整をするのでしょう?

身体は熱を外に放出することで体温を下げます。

では、どうやって体内で作られた熱を身体から放出するのでしょう?

人間の身体は主に2つの方法で行なっています。

1つ目は心拍数を上昇させて、皮膚にある血管を広げることによって身体の表面から空気中に熱を逃します。

これを「熱放散」と言います。(1

2つ目は汗をかくことです。

これを「気化熱」と言います。(1

この2つがうまくいかないと、体内に熱が溜まって、体温が上昇します。(1

その結果、熱中症になるのです。(1

これを防ぐために熱暑順化をするのです。

熱暑順化が進むと、皮膚血流量や発汗量が増えて、熱放散や気化熱がしやすくなるのです。(1

通常の体温を下げる反応として、まず最初に血管を広げます。(2

これは先程述べた、「熱放散」です。

そして、次の段階として汗をかきます。(2

これが、「気化熱」です。

しかし、順化機能が働くと、この第1段階の「熱放散」と第2段階の「気化熱」が同時に起こるようになります。(2

すなわち、早く体温が下がることになります。

また、熱暑順化が進むとホルモンにも変化が起こります。(2

これは先ほど言った気化熱の効果を高めます。

汗から放出される塩分を2/3くらい体内で再吸収するホルモンが作られるようになるのです。(2

暑熱順化ができていない時は汗に含まれる塩分が多く、ナトリウムを失いやすいです。(1

これはなぜかというと、汗の量が少ない時は汗に含まれる塩分が皮膚に出る前に体内で再吸収されるのですが、汗が多くなると再吸収されない塩分が増え、汗の塩分濃度が上昇します。(3

しかし、暑熱順化ができているときは、汗に含まれる塩分が少なく、ナトリウムを失いにくいのです。(1

それは、この作られたホルモンが汗から放出される塩分を2/3くらい体内で再吸収するからです。(2

これにより、汗がサラサラになり、蒸発も促し、気化熱効果が高まるのです。(2

これらのことから、熱中症を予防するために熱暑順化が重要なのです。

身体って上手くできてますよね!

その優れた身体の機能を活用するかどうかはあなた次第なのです。

暑熱順化の方法は?

ではどのようにして暑熱順化をしていけば良いのでしょうか?

まずは無理のない範囲で汗をかきましょう。(1

暑い日が出始めた5月頃から徐々に汗をかくようにするといいですよ。

具体的には、運動や入浴で汗をかいて身体を暑さに慣れさせましょう。(1

僕は知りませんでしたが、入浴も暑熱順化に効果的だそうです。

毎日湯船に浸かる日本の文化特有なのではないかと思います。

アメリカでは湯船に毎日浸かる習慣はないので長い間アメリカにいた僕は聞いたことがありませんでした。

入浴で汗をかくことは皆さんにもやり易い方法ではないでしょうか。

また、5月、6月の暑くなり始めた時期にクーラーを使うのを控えた方がいいです

なぜかというと、この時期にクーラーを使うと本格的に暑くなる前に順化ができないからです。(3

暑熱順化には数日から2週間ほどかかります。(1

個人差はありますが、時間が必要なので徐々に暑熱順化をしましょう。

そして、次が重要です。

一度、暑熱順化が出来ても数日暑さから遠ざかると暑熱順化の効果はなくなってしまいます。(1

ですので、1日中クーラーの効いた部屋に籠るのは良くないですね。

次に日本スポーツ協会が推奨している「暑熱順化のためのトレーニングポイント」を載せるので参考にしてくださいね。

まとめ

  • 暑熱順化とは身体が暑さに慣れること。
  • 熱中症を予防するために暑熱順化が必要。
  • 暑熱順化が進むと皮膚血流量や発汗量が増え体温が下がりやすくなる。
  • 暑熱順化には数日から2週間かかる。
  • 数日暑さから遠ざかると暑熱順化の効果はなくなる。

参考文献

  1. https://www.netsuzero.jp/learning/le15
  2. http://mux-hp.jp/files/libs/63/201604061504073530.pdf
  3. スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック

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この記事を書いた人

パフォーマンスインテグレーション代表
全米アスレティックトレーナー協会公認、アスレティックトレーナー(ATC)

東京の市ヶ谷で怪我の予防と施術、リハビリテーション、トレーニングを行なっています。腰痛や膝の痛みのリハビリの専門家です。ブログではスポーツ障害や健康に役立つ情報を中心に発信しています。

アメリカの大学(NCAAディビジョン1)にて多競技でアスレティックトレーナー(ATC)として12年間働きました。多くの大学生やプロアスリートの怪我の予防や治療、リハビリを行なってきました。

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